【第5回】 なぜ「優良企業の社長」が面接審査で落とされるのか(後編)
~面接審査に耐えうる社長とは何者か~
1.面接審査は「社長の準備量」が隠せない場である
面接審査は、社長の理解度がその場で露呈する場です。準備の浅さは、驚くほど隠せません。
社長自身が、
- 成長投資計画書の内容を正確に理解し
- 制限時間内で再構成し
- 自分の言葉で説明できる
という水準に達していることが、事実上の前提条件になります。
2.面接審査に臨む社長に求められる準備水準
答えは、実はそれほど複雑ではありません。ただし、その要求水準は決して低くありません。
① 社長自身が、成長投資計画を「再構成できる」状態にあること
面接審査で求められているのは、資料をなぞる説明ではありません。
成長投資計画書の内容を、自分の言葉で再構成し、制限時間内に説明できる水準に達していることが前提となります。
この水準に達していない場合、どれだけ書面が完成度の高いものであっても、面接の場で必ず綻びが生じます。
② 制限時間内で説明しきれるだけの理解と準備がなされていること
①の理解が前提となったうえで、次に問われるのが時間制約への対応です。面接審査では、説明時間が厳密に制限されています。35頁ものパワーポイント資料を15分で説明する必要があります。
そのため、重要な論点を選び取り、不要な説明を切り捨てる判断、複数回の予行演習(訓練)ができなければ、通常は時間内に説明を終えることはできません。
時間管理の成否は、話術ではなく、「事業計画をどこまで理解し、十分な準備をしているか」の結果として現れます。
面接審査に備えて事前に想定問答を作成し、社長と面接審査に同席する社員で共有しておくことは必要条件です。
③ 金融機関を含めた意思決定が、事前に統合されていること
面接審査では、成長投資計画書に対して確認書を発行した金融機関の関与が、実質的に問われます。
ここで重要なのは、金融機関が発言するかどうかではありません。
- なぜこの投資が必要なのか
- どこにリスクがあり それをどう支えるのか
といった点について
社長と金融機関の認識が一致している状態が前提になります。この統合が不十分な場合、そのズレは面接の場で必ず表面化します。
3.質疑応答で露呈する「理解の浅さ」
面接審査では、社長によるプレゼンの後、相当時間の質疑応答が行われます。
質問は、
- もし投資を行わなかった場合の経営への影響
- もし不採択となった場合の事業計画への影響
- 投資と売上増の因果関係
- 売上計画の実現可能性
- 雇用計画の根拠
- 財務リスクへの考え方
など、計画の核心を突くものばかりです。
ここで
- 回答が曖昧(抽象的)になる
- 結論が揺れる
- 面接審査に同席させる社内メンバー(取締役クラス)と説明がズレる
といった状況が起きると、審査員は一気に慎重になります。
審査員の関心は、「事業の成長可能性」から「申請者に公金を投入することのリスク管理」へと瞬時に切り替わります。
4.面接審査の「空気」が示すサイン
十分な理解と準備がなされている場合、面接の空気は明らかに変わります。
- 質問が前向きになる
- 成長後の姿を前提とした確認が増える
- 建設的な対話になる
これは、評価の土俵に乗ったことを意味します。
面接試験終了時に審査員から「頑張ってください」と心からの声を掛けられるかどうかで、審査結果はおおよそ見えてきます。
筆者は長年、公的補助金や経営革新計画の現場に関わってきましたが、面接終了時の空気と結果が無関係だったことは、ほとんどありません。
逆に、理解が不十分な場合、面接は「確認の場」ではなく、「不採択を確定させる場」になります。
5.後編のまとめ
面接審査は、社長の話し方や度胸を評価する場ではありません。
- 計画をどこまで理解し準備をしてきたか
- 成長の必然性を自分の言葉で語れるか
- 社内外の意思決定が統合されているか
これらが、容赦なく見抜かれる場です。
次回予告
次回は、この水準の理解を どのように事業計画へ落とし込むか を整理します。