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【シリーズ~大規模成長投資補助金のすべて⑥前編~】

【第6回】 成長投資計画書の作り方(前編)

· 補助金

【第6回】成長投資計画書の作り方(前編)


~採択される計画書の作り方~

1.成長投資計画書とは

大規模成長投資補助金の提出書類の中核をなすのが「成長投資計画書」です。パワーポイントを使用して表紙も含めて35ページ以内に収める必要があります。

Section image

この計画書は、

1次審査である書類審査で定量面を中心に審査され、

2次審査である面接審査における社長のプレゼンテーション資料になります。

本稿では、成長投資計画書の全体像を俯瞰し、

「採択される計画書とはどういうものか?」、

「大企業や中堅企業と比べて体力のない中小企業が取るべき戦略とは何か?」

を明らかにしていきます。

2.まず、採択された計画書を実際に見てほしい

ここで、いったん文章を読むのを止めて、実際の資料を見ていただきたいと思います。

大規模成長投資補助金の公式サイトでは、補助金の交付が決定した企業が公表されており、

その中には、成長投資計画書の一部がPDFで公開されています。

大規模成長投資補助金 交付が決定した企業

どれでも構いません。一つ選んで、PDFを開いてみてください。

そして、ざっと眺めてみてほしいのです。書かれている容を理解したり、分析する必要もありません。

ただ、「読む側」に立って眺めてみる。

それだけで十分です。

3.多くの採択事例は、かなり書き込まれている

実際にいくつか目を通してみると、多くの採択事例に共通する印象があるはずです。

それは、文字が小さく、情報量が非常に多いという点です。

文章は長く、説明は丁寧で、一つのページに盛り込まれている情報も少なくありません。

これを見て、

「少し詰め込みすぎではないか」

と感じたとしても、それはごく自然な反応です。

ここで、読む側の立場に立ってみてください。

審査員は、このような計画書を一社分だけ読んでいるわけではありません。

同じような情報量の計画書を、何十社分も、限られた時間の中で読み続けています

一つひとつを精読し、丁寧に読み解く前提で審査が行われているわけではない、

という現実があります。

ただし、ここで誤解してはいけない点があります。

この書き込み量は、

計画書の出来が悪いからでも、無駄に冗長だからでもありません。

多くの場合、

大企業や中堅企業の優秀なスタッフが、説明責任を果たそうとした結果として、

自然にそうなっているのです。

4.だからこそ、中小企業には別の勝機がある

ここで、視点を切り替えます。

もし審査員が、

限られた時間の中で多くの計画書に目を通さなければならないとしたら、

どのような計画書が「助けになる」でしょうか。

中小企業が、これらの採択事例と同じ書き方をそのまま真似する必要はありません。

中小企業は、

書ける情報量や、組織としての説明資源では、大企業と同じ土俵に立つことは難しい。

しかしその一方で、

事業の本質を、できるだけシンプルに、読みやすい形で提示する

という選択ができます。

読む側の負担を下げ、「何をやろうとしている事業なのか」が一目で伝わる。

この「読みやすさ」こそが、中小企業にとっての、現実的で強力な勝機になります。

すこし立ち入った話になりますが、

成長投資計画書は、

フォント 「Meiryo UI」、フォントサイズ 「12」、行間 「1.5」 行 

で統一をお勧めします。

これであれば、簡素で読みやすい計画書になります。

やってみるとわかりますが、

これを実現させるためには、差別化されたビジネスモデルを基礎としつつ、

容赦ない「そぎ落とし」と、高度の日本語のセンスが絶対に必要です。

ファッション・デザイナーの仕事とよく似ています。

5.投資計画書は「自由に構成できる資料」ではない

ここで、制度の前提を整理しておきます。

成長投資計画書では、書くべき内容が、あらかじめ目次レベルで指定されています。

単に項目が示されているだけでなく、記載方法や様式も含めて、公式に定められています。

申請者は、この枠組みから自由に構成を変えることはできません。

言い換えると、

成長投資計画書は「何を書いてもよい資料」ではなく、

問われていることに順番に答えていく資料です。

6.この時点で、計画書の大半は埋まる

下の図は、公式に公表されている成長投資計画書の目次です。

大規模成長投資補助金 成長投資計画の目次

実質的に、この項目は変更できません。記載内容も決まっています。

これに沿って記載を進めていくと、

最もシンプルなケース(企業1社単独申請で、大学連携の予定のない場合)であっても、

それだけで約25ページ分が埋まります。

これは、申請者の努力不足でも、書き方の問題でもありません。

制度上、避けられない前提条件です。

7.分水嶺は「残り約10ページ」にある

成長投資計画書には、35ページ以内という上限が設けられています。

必須項目を記載した時点で約25ページが使われるとすれば、残りは約10ページです。

この残りのページこそが、採択・不採択を分ける分水嶺になります。

重要なのは、ページ数そのものではありません。

残されたページで、何を書くことを選び、何を書かないと決めたか。

この意思決定が、計画書全体の印象を大きく左右します。

8.この10ページを、どう使うか

残りの約10ページ、次のようなテーマを扱うことが合理的です。

  • 商圏内における他の設備投資との位置関係を示す地図(施設間シナジー)
  • 補助事業で建設する建物の図面や完成イメージイラスト
  • 特定の地域を補助事業実施場所として選択した理由とその地域の特性、市場分析

ここで重要なのは、

何を書いたかの中身そのものではありません。

限られたページ数の中で、事業の本質を伝えるために、

何を優先し、何を後回しにしたのか。

その取捨選択の結果が、計画書の形として表れている、という点です。

9.前編の結論

成長投資計画書は、書き込み量を競う資料ではありません。

制約条件を正しく理解したうえで、どこにページを使うかを判断できているか。

その意思決定こそが、中小企業がこの補助金に挑む際の最大の勝負どころになります。

次回(後編)では、こうした全体像を前提に、

計数計画をどのような考え方で組み立てるべきかについて整理していきます。