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【シリーズ~大規模成長投資補助金のすべて⑦~】

【第7回】 重要!賃上げ型の補助金とは併用できない

· 補助金

【第7回】 重要!賃上げ型の補助金とは併用できない

2025年12月3日、事務局から公表された「採択企業向けQ&A」において、

衝撃的な情報が新たに通知されました。

そこで明らかにされたことが、「賃上げ要件」を伴う他の補助金との併用制限です

同日時点で一般に公開されている情報は、

「よくある質問 別紙」であり、

本稿で紹介する「採択企業向けQA」はこの公開情報を更に厳しくする内容となっています。

一般に公開されている情報=よくある質問 別紙

賃上げ要件を伴う他の補助金との併用制限を読み取ることは事実上不可能です。

大規模成長投資補助金 よくある質問 別紙

   https://seichotoushi-hojo.jp/assets/pdf/besshi.pdf

今回は、この、賃上げ要件を伴う他の補助金との併用制限という論点を整理します。


1.12月3日採択企業向けQ&Aで何が示されたのか

公表された採択企業向けQ&Aでは、

大規模成長投資補助金の賃上げ要件期間と、

他の賃上げ要件付き補助金の賃上げ期間が重複する場合、

原則として併用は認められない、という整理が示されました。

ポイントは二つあります。

第一に、

「賃上げをしていること」自体が問題なのではなく、

「同じ賃上げ期間について複数制度で政策効果を主張すること」が問題だという点です。

第二に、

これは公募要領等の公開情報による注意喚起ではなく、

「採択企業向けQ&A」として整理されたという点です。

つまり、既に大規模成長投資補助金に採択されている案件であっても、

この考え方の影響を受け得るということです。

場合によっては、他の補助金を辞退しない限り、

大規模成長投資補助金の採択取消や返還リスクが生じる可能性を示唆するものです。

一般に公表されている公募要領やQAを読んでいても、

このリスクを具体的に想定していた企業は多くなかったはずです。

2.懸念される影響

上記の結果、

事業再構築補助金にかかわらず、何らかの賃上げを要件とする補助金に採択され、

賃上げに取り組んでいる企業(その多くは中小企業者)が、

大規模成長投資補助金に採択された場合には、

他の賃上げを要件とする他の補助金との併用可能性」について具体的に確認する必要があるということです。

その上で、

大規模成長投資補助金に採択され、これを優先するということであれば、

既に採択された他の賃上げを要件とする補助金の辞退、

または、国庫への返金を行うことになります。

これを行わないと、

巨額の大規模成長投資補助金の辞退または国庫返金を求められるという

最悪の事態が生じる可能性があります。


ご注意いただきたいのは、本稿に記載の情報が「一般には未公開の情報」であるということです。

本稿の情報自体は全て事実ですが、

大規模成長投資補助金に応募される予定の中小企業者の皆様には、

必ず、事務局に対し具体的に確認することを強くお勧めします。

3.今回の併用制限の「見えない前提」とは何か

なぜ、このような併用制限が設けられたのでしょうか。

背景にあるのは、「賃上げという政策効果を二重に評価しない」という考え方と思われます。

補助金は企業支援の側面を持ちますが、同時に政策実行の手段でもあります。

政策目的が重複する場合、その効果を複数制度でカウントすることは許容しない、

という整理です。

ここが制度の「見えない前提」です。

補助金を個別に見ていると、

賃上げをすれば「この制度も使える」「あの制度も使える」と足し算で考えがちです。

しかし、国の側から見れば、政策効果がどのように発現しているかが重要であり、

企業側の都合で自由に組み合わせられるわけではありません。

大規模成長投資補助金は投資規模が大きく、賃上げ要件も明確に設定されています。

その賃上げ期間が他制度と重複する場合、当然に整合性が問われることになります。

4.これから応募する企業が取るべき対応


これから大規模成長投資補助金に取り組む企業は、

まず自社が過去に賃上げを要件とする補助金を申請または受給していないかを確認してください。

特に事業再構築補助金に採択された企業は要注意です。

該当する場合、

その賃上げ期間が本補助金の賃上げ要件期間と重複していないかを精査する必要があります。

形式的に期間がずれているかどうかだけでなく、

政策目的の観点から説明可能かどうかを意識すべきです。

少しでも判断に迷う場合は、

大規模成長投資補助金事務局に確認することを強く推奨します。

この確認を怠るとどうなるか。

苦労して成長投資計画書を作成し、厳しい審査を通過し採択され、

補助金の交付を受けた後に、併用制限に抵触していることが判明する。

そうなれば、交付取消という結果も現実的なリスクになります。

もしも、併用が認められない他の補助金を受け取ってしまっている場合、

いったん受け取った補助金を返還することは手続き上簡単ではないでしょう。

補助金額が圧倒的に大きい大規模成長投資補助金の申請自体を

あきらめざるを得ないこともあり得ます。

更に、大規模成長投資補助金の数億円の補助金と、

他の「賃上げ」を要検討する補助金の双方を受け取ってしまった後に、

本稿の併用不可制限違反が発覚した場合のリスクは企業の存続にも係わる可能性があります。

まとめ

今回の賃上げ補助金との重複整理は、単なる注意事項ではありません。

公募要領等公開された制度の条文だけでは見えにくい、

「政策効果の整合性」という前提を示したものです。

但し、2026年春に予想される第5回公募以降は、

あらかじめ公募要領に明記されることもあり得ます。

大規模成長投資補助金は、金額が大きい分、後戻りが難しい制度です。

だからこそ、

応募前の段階で制度の前提を正しく読み取り、他制度との関係を整理しておく必要があります。

「申請できるかどうか」ではなく、

「後から説明を求められても耐えられるかどうか」。この視点で検証してください。


次回予告

次回は、「大規模成長投資補助金に応募する前に確認すべき5つの論点」を取り上げます。

制度理解、財務体力、投資回収の見通し、社内体制、そして政策整合性。

本補助金は「出せばよい制度」ではありません。「出す前に確認すべき基本論点」を整理します。