【第2回】採択企業に共通する「5つの条件」
〜支援現場で見えてきた“勝てる企業”の特徴〜
大規模成長投資補助金は、採択企業の顔ぶれを見ると「偶然」ではなく「必然」で選ばれていることが分かります。
第2回では、実際に支援の現場で採択・不採択を見続けてきた立場から、採択企業に共通する“5つの条件”を整理します。
1.はじめに
第1回では、この補助金が「成長そのものを証明する制度」であることを解説しました。
今回は一歩踏み込み、採択される企業にどのような特徴があるのかを明確にしていきます。
補助金は“書類の出来”で決まる部分もありますが、最終的には
「事業の伸びしろ」
「社長が語る力」
「成長の必然性」
という三点が強く影響します。
2.採択企業に共通する5つの条件
〇条件1:既存事業の基盤がしっかりしている
採択企業は例外なく、既に一定の売上・利益水準を確保しています。
この補助金は「弱い企業を救う制度」ではなく、
「強い企業をさらに伸ばす制度」です。
・売上10億〜100億クラスが多い
・財務が安定し、資金繰りも落ち着いている
・既存事業が明確で、成長理由が説明できる
この“盤石さ”が、申請内容の説得力につながります。
〇条件2:人材採用や賃上げの必然性が明確である
採択企業は、人を増やすことや賃上げが目的ではなく、
「採用しなければ成長できない」「賃上げにより優秀な人材を確保したい」
という“事業上の必然性”を持っています。
たとえば:
・新工場稼働に伴う技能職の確保
・業務拡大に対する管理部門の強化
・新設備を動かすための専門人材の確保
逆に「人が足りないから補助金で増やしたい」というレベル感では通りません。
審査員は「雇用が生まれる理由」を極めて厳密に見ています。
〇条件3:中長期の投資計画がすでに存在している
採択企業は、補助金ありきで計画を作りません。
むしろ、こう言えます。
「補助金がなくても投資したい。その計画を加速させるために補助金を使う」
計画の深さは、次の点に表れます。
・5年〜10年スパンでの投資構想
・市場拡大の見通し
・既存の課題認識
・経営者の意思決定プロセス
補助金申請のために作られた“薄い計画”は、2次審査で一瞬で見破られます。
〇条件4:戦略ある投資が「必然」である
採択企業には、投資の理由に“因果関係”があります。
・なぜその設備なのか
・なぜこのタイミングなのか
・それが売上と雇用の増加にどうつながるのか
単なる更新投資や改善投資は、審査では評価されません。
求められているのは「非連続な成長を生む投資」です。
〇条件5:社長が事業を“語れる”
これは採択企業を見ていて、最も強く実感する共通点です。
・社長が、自社の事業モデルを正確に説明できる
・社長が、自社の成長の根拠を論理的に語れる
・社長が、投資の必然性を言語化できる
特に2次審査(15分プレゼン+45分質疑応答)では、
社長の言語化能力の差が、採択・不採択を分ける最大要因になります。
3.経営者タイプ:採択企業に多い“社長像”
補助金支援の現場で感じるのは、採択企業の社長には共通する「タイプ」があるということです。
〇タイプ1:事業を抽象化して語れる社長
「ウチの商売はこういう構造で成り立っている」と説明できる。
具体論だけに偏らず、抽象と具体の往復ができる。
〇タイプ2:数字に対して素直で誤魔化さない社長
・売上の伸び
・利益率
・投資額
などについて、曖昧さがない。
〇タイプ3:弱点を隠さず、課題を認める社長
審査の現場では、企業の弱点を正しく自覚している社長のほうが強い。
弱点を語れる社長は「改善の意思」を示せる。
〇タイプ4:物語を語れる社長
「なぜ今、この投資をするのか」を語れる企業は強い。
審査員が納得する“経営者の物語”を持っている。
4.実際に起きたケース
優良企業でありながら、社長のプレゼンが整理されておらず、
2次審査で落ちたケースが実際に存在します。
・事業モデルの整理ができていなかった
・投資の理由を“設備の説明”で終わらせてしまった
・数字の根拠を語れなかった
・質問に対して結論を言わず、話が迷子になった
逆に、規模が小さくても、社長の語る力で採択された企業もあります。
結局のところ、審査は“人”がやっているという事実を無視してはいけません。
5.まとめ
採択企業に共通する特徴を一言でまとめれば、
「成長の必然性があり、社長がそれを語れる企業」です。
・既存事業の基盤が強い
・人材採用の理由が明確
・中長期の投資計画を持っている
・投資が成長とつながっている
・社長が事業を論理的に説明できる
この5点が揃っていれば、採択は決して難しくありません。
次回予告
第3回では、
「1次審査(定量評価)で落ちる企業の典型例」
を取り上げます。
「なぜ落ちるのか?」を定量的に明確にします。
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